若年層から火がついた浴衣ブームが成熟してきた。当初は奇抜な着こなしが目立ったが、2010年を越したころから正統派への志向が高まっている。男性用は花火大会などに向けた初心者の購入がまだ多く、浴衣に新味は乏しいが、アンクレットやトウリングなどのアクセサリーにファッション性が増している。ブームの始まりは、女性では「和」の伝統を洋装の視点で楽しむ手法と「キモノ」としてフォーマルに着こなす二つの流れがあった。「ディズニープリンセス柄」や、レースの半襟、フリルの兵児帯(へこおび)、コルセット状の「オビスチェ」と言われる帯などは洋服感覚の代表。半襟や帯締めをして足袋を履いたりする「お出かけ」コーディネートも流行したが、洋服化したアイデアに押され気味であった。ネックレス、アンクレットなど洋物アクセサリーのコーディネートが最近の特徴である。着付けしやすい「セパレート浴衣」も登場。だが、流行が成熟するにつれ、正統派の浴衣へと回帰が強く見られるようになった。「歴女(日本の歴史に興味を示す女性)」などのブームで「和もの」や伝統的な和服が見直されている背景もあり、正統な「和」への関心を持つ「和女子(やまとがーる)」の出現もブームを加速させている。ビールやお茶などのCMにも、正統派の浴衣姿のモデルが多く登場してきたのもその現れだ。またシャンパンと浴衣パーティーなど「和」の正統派とラグジュアリーの組み合わせなども定着してきた。百貨店などでは、洗濯しやすいポリエステル製などのカジュアルなタイプなど、取り扱いやすい素材に力を入れ、またユニクロでは「日本の伝統的なカジュアルウェアを世界中のワードローブに」とのキャッチフレーズで、WEBサイトで着方のムービーを紹介したり、竹久夢二、中原淳一などから取られたレトロな柄行きを提案し、話題を呼んだ。着こなしは伝統的に、素材や柄行きはモダンに機能的に変化している。