幹細胞とは、他の細胞の元となる母細胞で、それ自身がさまざまな細胞に変化(分化)する多様性と、分裂しながら同じ細胞を作り出す増殖性という能力を併せ持っている。そのため、特に再生医療の分野で、けがや病気で傷んだ臓器に幹細胞を移植し、修復することを目的とした研究が近年盛んに行われ、非常に注目されている。化粧品分野においても、2012年、幹細胞の研究成果を搭載した商品が各社から相次いで発売された。資生堂は、加齢にともない皮膚の真皮幹細胞の機能が低下することを発見した。具体的には、(1)真皮幹細胞が機能する居場所は真皮の血管の周囲である、(2)真皮幹細胞機能の維持をつかさどる成長因子PDGF-BBの役割、(3)加齢により成長因子が減少し真皮幹細胞の数が減少する、という三つの発見である。京都大学山中伸弥教授のノーベル医学・生理学賞受賞によって、iPS細胞に対する関心が高まるなか、幹細胞に着目した化粧品が今後も増えると見られる。