ペットの分野でフィラリア症という場合、犬糸状虫によって発症する犬心臓糸状虫症をいう。犬糸状虫は成虫では雄10~20cm、雌25~30cmの長さになる線虫で、蚊を中間宿主とし、主にイヌ科の動物の心臓および肺動脈に寄生する。心臓に寄生した犬糸状虫は子虫(ミクロフィラリア)を血液中に産む。この子虫は蚊が吸血するとき蚊の体内に移行し、10~14日で感染子虫に成長する。感染子虫はその蚊が別のイヌを吸血する際に、再びイヌの体内に侵入する。なお、吸血するのは雌の蚊のみである。感染子虫は成長しながら数カ月から半年かけて、最終寄生場所である心臓や肺動脈へと進んでいく。心臓や肺動脈に到達すると、心臓、血管、その他多くの臓器の機能が妨げられ、食欲や元気がなくなり、運動を嫌い、咳、失神、腹水、血色素尿などの症状が発現し、死に至る。ただし発見が早ければ、助かることも多い。現在、フィラリア症の予防は、月1回の内服薬投与により、成長途中にある感染子虫を殺滅することにより行っているが、薬剤の投与期間は外気温によって異なる。犬糸状虫はネコにも感染することがある。ネコは本来の寄生主ではないため、感染率は低いものの、感染すると致命的となるが、ネコもイヌと同様に予防できる。