ビルや一般家庭の屋上・屋根や壁面を植物で飾ること。緑が少ない都市部のビルなどで花や緑が楽しめるだけでなく、雨漏り防止などの建築物の保護効果、断熱による冷・暖房費の削減効果などもある。国土交通省が入居する建物の屋上に設置された屋上庭園での調査によると、猛暑日だった2007年8月16日、屋上のタイル表面の最高温度が56.1℃だったのに対し、芝生面は22.4℃で、23.7℃も低かった。さらに、都市部の気温が郊外より島状に高くなるヒートアイランド現象の一因となる、地表面からの夜間放出熱量のうち、屋上緑化により抑制される量は、100m2の芝生面で10台の6畳用家庭用エアコンを最小能力で24時間稼働させた冷却能力に相当すると推計している。また壁面緑化については、東京都産業労働局農業試験場が03年に実施した調査によれば、壁面温度が最大約10℃低減され、夜間の壁面放熱にも抑制効果が認められた。01年に東京都がヒートアイランド対策として屋上緑化を条例化すると、他の自治体にも条例化の波が広がり、助成策を講じる自治体も増えてきた。国土交通省が07年1月までに主要関連企業にアンケート調査した結果(回収率50.4%)では、全国の屋上緑化面積は約160ha、壁面緑化面積は約10haとなっている。また、東京都の07年度までの屋上等緑化合計面積は、約92.7haであった。近年は屋上・壁面緑化技術の向上により、コンクリートを侵食しない断根技術、薄く軽量で理化学性がよい土壌、傷んだ部分を簡単に取り換えられるユニットシステムのマット、逆さまにしても土が落ちないのでオーバーハングの壁面にも飾れるマット植物、適正な植物の選定法、合理的な潅水方式などが生まれ、手間をかけずに屋上・壁面緑化を楽しめるようになってきている。また、企業にとっては集客・宣伝効果や従業員の福利厚生、あるいは庭園を公開することによる地域住民との共生、さらには企業イメージの向上といった付加価値を高める効果も期待される。商業施設等の大規模な屋上緑化としては、福岡市のアクロス福岡(1995年)、大阪市のなんばパークス(2003年)などが先駆。06年に屋上緑化した東京の伊勢丹新宿店では、季節の変化をテーマにした2050m2の回遊庭園に約210種類の草花が植えられ、緑化による地表面の温度上昇の抑制や、空気の清浄化、ヒーリング効果などが期待されている。園内11カ所に設置されたネームプレート付きポールに専用の携帯IC端末を近づけると、付近の草花や屋上緑化の効果などについて、画像や音声で学習できる。また子ども用農園では、化学肥料を使わないオーガニックの土壌で、農薬を使わずに作物を育てるなど、地球・都市環境に配慮した安全・安心な活動を行っている。07年には東京・銀座で「銀座グリーンプロジェクト」がスタート。これは銀座の屋上でミツバチを飼いハチミツを採る「銀座ミツバチプロジェクト」に共鳴したTV番組と銀座の企業などが、屋上緑化により銀座にミツバチの集まるような花と緑を増やそうとするもので、松屋銀座では野菜、白鶴酒造では酒造用水稲、レストランなどではハーブを植えている。ある商業施設では、屋上庭園にしたことにより、開業以来20カ月間客足が伸びたという。