その地方で古くからある在来種を用いて栽培された、伝統的食生活とかかわりのある野菜のこと。京野菜、加賀野菜など全国各地にある。ナス、カブ、ネギやダイコンなど、その地域の気候条件や土壌条件にあった品種が育成されてきたが、病虫害に弱く栽培が難しい、規格がそろいにくいなどの難点があるため、両親よりも生育旺盛で作りやすく、そろいがよくなる1代雑種品種へと変わっていった。しかし近年、伝統野菜を郷土料理に取り入れて、地域の活性化を図る動きが全国的に見られるようになった。絶滅しそうな野菜のうち、スローフード協会(本部イタリア)により、おいしい地場産品として「味の箱舟(アルカ)」に認定された野菜は、八列トウモロコシ(八列とうきび 栽培地北海道)、安家地大根(岩手県岩泉町)、花作大根(山形県長井市)、余目ネギ(仙台市)、米沢の雪菜(山形県米沢市)など22品目ある(2008年10月31日現在)。同じ名前でも他府県が産地であったり、菜類のように形質が変わっているものもあり、自治体も種子の保存や、地域ブランドを商標登録することで、伝統野菜の復活と産地保護に取り組んでいる。宇都宮市の日光種苗株式会社では、2007年に「味の箱舟」に認定された野口菜をはじめ、いくつかの伝統野菜の苗を販売している。