スルガラン(Cymbidium ensifolium)は日本南部からインドにかけて分布する光合成を行うラン科シンビジウム属のラン。一方マヤラン(Cymbidium macrorhizon)は、関東から東アジアにかけて分布する光合成を行わないラン科シュンラン属のラン。独立行政法人国立科学博物館筑波実験植物園の遊川知久研究員の研究チームは、光合成を行うスルガランと行わないマヤランとの雑種を世界で初めて育成・開花させた。2013年1月18日現在、雑種名はついていない。06年8月、スルガランのめしべにマヤランの花粉を交配して生まれた。約1年後に得られた種子を、栄養のある寒天培地にまいて培養。6年後の12年8月、ようやく初花が開花した。最初に開花したのは発芽・生育した約70株中の1株で、植物体の高さは約15センチ。花の直径は3~4センチで、黄緑色の地に赤紫色の模様が入っている。12年末までに8株が開花している。葉を持つ株と持たない株とがあり、葉を持つ株では光合成をしていると見られている。マヤランは、ベニタケ科などのキノコ類と共生して栄養と水をもらっており、光合成を行わない。このような奇妙な進化の謎を解明するため、今後雑種を遺伝子レベルで解析していく。