映像データの圧縮では、MPEG(Moving Picture Experts Group)方式の非可逆圧縮が基本となる。MPEGの基本は静止画としての知覚符号化に加え、動画すなわち連続する静止画間において、動きのある部分のみを記録する手法で劇的なデータ圧縮を達成するものである。DVDやデジタル放送に用いられるMPEG-2(Moving Picture Experts Group phase 2)では、動きの多いシーンにはより多くのデータを、動きの少ないシーンには少ないデータと、時間あたりのデータ量、つまりビットレートを可変するVBR(variable bit rate)を採用することで、高画質で高効率の圧縮を実現している。VBRの効果としては、夕焼け空など模様のないグラデーションがタイル状に分割されて見えるブロックノイズ(block noise)や、アニメーションのように輪郭のはっきりとした絵や文字の周りに蚊がまとわりついたような模様が現れるモスキートノイズ(mosquito noise)など、低ビットレートの圧縮映像で顕著に現れる視覚上のノイズの低減が挙げられる。近年では、データ量の多いハイビジョン映像を高効率にメディアへ収録する目的で、MPEG-2に比べ、約2倍の高効率圧縮が可能なMPEG-4をベースとするH.264の利用が急拡大している。