「児童ポルノ禁止法」(正式名称「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」)に対する改正案。2009年11月20日、自民党が国会に提出した。個人が児童ポルノを持つ「単純所持」も規制対象とすることが大きな特徴。もともとは、1996年にストックホルムで開催された「第1回児童の性的搾取に反対する世界会議」で、アジアにおける日本人の児童買春や、日本製児童ポルノの蔓延(まんえん)などが厳しく非難されたことが背景にある。これを受け、99年「児童ポルノ禁止法」が成立したが、自公両党は「単純所持を禁止していないのは、主要8カ国のうちでは日本とロシアだけ」だとして、2009年1月、今回とほぼ同じ内容の改正案を国会に提出。民主党との間で修正協議が行われたが、衆議院の解散という政治的事情により時間切れで廃案となっている。アニメやマンガ、ゲームなどの創作において、性的表現はいつも議論の的になる。常に風当たりが強い。児童への性的虐待・搾取は明らかな犯罪だが、とりわけ今回は、「児童ポルノ」の定義が曖昧(あいまい)な上、「単純所持」が規制対象となることで、一歩誤れば恣意的な捜査の拡大につながりかねない点が懸念されている。規制と表現のあいだで、今後も議論が続く問題であるにちがいない。