イチムラ・ウザエモン。本名、坂東衞(ばんどうまもる)。歌舞伎立役(たちやく)。屋号、橘屋(たちばなや)。
7月8日、芸術院会員で人間国宝、文化功労者の歌舞伎俳優、市村羽左衛門さんが、肺がんのため、東京都千代田区の病院で死去。84歳。
1916年、東京都出身。6代目坂東彦三郎の長男。21年に坂東亀三郎の芸名で、帝劇で初舞台。7代目坂東薪水(しんすい)、7代目坂東彦三郎を経て、55年に17代目市村羽左衛門を襲名。伯父の6代目尾上菊五郎の下で役者としての修業を積み、6代目の死後、尾上梅幸、尾上松緑らと「菊五郎劇団」を結成。戦後歌舞伎を支えてきた立役大幹部の名優のひとり。菊五郎劇団では、脇役、敵役を演じることが多かったが、70歳を過ぎてから、91年1月に、6代目直伝の「勧進帳」の弁慶を、翌月には「仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)」の高師直(こうのもろなお)と大星由良助(おおぼしゆらのすけ)を演じるなど、座頭として主役を務めた。明治期に築かれた東京の近代歌舞伎の演技と演出を継承、指導してきた「歌舞伎界の生き字引」としての功績も大きい。90年、人間国宝、91年、芸術院会員、99年、文化功労者。99年から日本俳優協会会長。