イタニ・ジュンイチロウ。霊長類・人類学者。京都大学・神戸学院大学名誉教授。
8月19日、「サル学」の創始者のひとりで、霊長類の生態研究で世界的な業績を残した人類学者の伊谷純一郎氏が、肺炎のため、京都市内の病院で死去。75歳。
1926年、鳥取県生まれ。生来の動物好きから京大理学部動物学科に入学。今西錦司博士に弟子入りし、48年からニホンザルの研究を始める。サルの個体を識別して名前をつけて観察する「個体識別法」を発案。大分県高崎山の野生ザルを初めて餌付けし、サル社会の「群れ」の構造を明らかにするなど、霊長類の生態研究の基礎を築く。58年以後、アフリカの野生ゴリラやチンパンジーの研究と並行して、少数民族の狩猟民ピグミーや、遊牧民トゥルカナなどの研究を通じて「生態人類学」の分野にも手をつけた。84年、人類学のノーベル賞といわれる英国王立人類学研究所の「ハクスリー賞」を受賞。著書に「高崎山のサル」「ゴリラとピグミーの森」など。