アミノ・ヨシヒコ。歴史学者。
2月27日、民衆の視点で日本の中世史をとらえなおした歴史学者、網野善彦さんが肺がんのため死去。76歳。
1928年、山梨県生まれ。50年東京大学文学部史学科卒業。日本常民文化研究所勤務、都立高校教諭を経て、名古屋大学助教授、シカゴ大学客員教授、神奈川大学特任教授などを歴任。従来の歴史学の視野からもれていた山民、芸能民など非定住民、漁民、商工民など農民以外にも着目した。また、海洋交易を介してアジア全域にも目を向けるなど、天皇を頂点とする国家観や稲作中心の歴史観を問い直し、日本の中世社会の多様性を示した。こうした独自の歴史観は「網野史学」と呼ばれ、80年代の中世史ブームの火付け役となった。2000年発刊の「日本の歴史」(講談社刊)の第1回配本、「日本とは何か」が10万部を超え、その著書は幅広い読者を得ていた。その影響は隆慶一郎の作品やアニメ映画「もののけ姫」などにも広く及んでいる。その他の著書に「増補 無縁・公界・楽-日本中世の自由と平和」「異形の王権」「日本社会の歴史」「日本の歴史をよみなおす」などがある。