アリ・シスタニ。Ali al-Sistani。イスラム聖職者。
8月26日、イラク・ナジャフで「反米反占領」を掲げて闘争を続けるサドル師側を穏健派のシスタニ師が説得し、停戦を実現。
1930年、イラン・マシュハド生まれ。イラクに5人存命するイスラム教シーア派の最高権威である大アヤトラの一人。宗教学者の家に生まれ、中央イランの聖地コムでイスラム法学を学び、52年イラクのナジャフに移住。シーア派指導者の中でも政治への介入を極力避ける、穏健「反占領」派の中核。心臓疾患の治療のため、渡英していたが、ナジャフの停戦を仲介するため急ぎ帰国した。シーア派の宗教指導者は上下の位階がはっきり分かれており、シスタニ師はサドル師よりも高位。アメリカ軍の軍事行動に追い詰められていた「反米反占領」の大義を掲げるサドル派が、穏健派とはいえ同じ「反占領」を訴えるシスタニ師の仲介で停戦に応じた。今回の事件で、軍事力や暫定政府だけではイラクの民主化の過程で起こる反占領勢力の抵抗は押さえられないことがはっきりし、シスタニ師の影響力がますます注目されることとなった。