J.G.バラード。James Graham Ballard。SF作家。
2009年4月19日、「ニューウェーブの旗手」と呼ばれ、「燃える世界」「沈んだ世界」「結晶世界」の「破滅三部作」などで高い評価を得たイギリスのSF作家、J.G.バラードさんが死去。78歳。代理人によれば、前立腺がんにより長く療養生活を送っていたという。
1930年、中国の上海生まれ。日本軍の侵攻に伴い、43年から3年間捕虜収容所に収容され、その時の体験に基づく「太陽の帝国」(84年)は、スティーブン・スピルバーグ監督により87年に映画化された。46年イギリスに帰国。50年代から執筆活動を始め、62年初の長編「狂風世界」で注目を浴びると、同年の「沈んだ世界」、64年の「燃える世界」、66年の「結晶世界」でいわゆる「破滅三部作」を完成させ、人間の精神世界を深く掘り下げる作風でSF界の「ニューウェーブ」と呼ばれる運動をリードした。ほかにも、倒錯したエロティシズムと暴力が悪夢のようにつづられる73年の「クラッシュ」(デビッド・クローネンバーグ監督により96年に映画化)など、多くの傑作を残した。