カヤノ・シゲル。元参議院議員。民族文化研究家。
5月6日、アイヌ民族初の国会議員でアイヌ文化の保存に尽力した萱野茂さんが、急性肺炎のため死去。79歳。
1926年、北海道生まれ。二風谷(にぶだに)尋常小学校卒業。アイヌ語を母語とする祖母に育てられた。戦後、アイヌの民具や民話・民謡の収集・録音に励み、72年、現在の二風谷アイヌ資料館を開設。75年、アイヌの古老たちから聞いた話を集めた「ウエペケレ(昔話)集大成」で菊池寛賞を受賞。92年、参院選に旧社会党から立候補し落選するが、94年、繰り上げ当選を果たした(96年に民主党へ移籍)。国会ではアイヌ語を交えて質問を行い、北海道旧土人保護法の撤廃とアイヌ新法(アイヌ文化振興法)の制定にかかわった。また、アイヌの聖地・二風谷でのダム建設用地の強制収用は違法として国を相手に訴訟を起こし、97年、アイヌを先住民族と認める初の判決を勝ち取った(ダムについては完成済のため請求棄却)。議員を引退した後も、アイヌ語放送のミニFM局を開設するなど、一生をアイヌの伝統継承や地位向上に捧げた。その功績が評価され、2001年、勲三等瑞宝章を受章している。「萱野茂のアイヌ語辞典」など著書多数。