アベ・キンヤ。歴史学者。元一橋大学学長。
9月4日、西洋社会史研究の第一人者であり、『中世を旅する人びと』などの著書でも知られる元一橋大学学長・阿部謹也さんが急性心不全のため死去。71歳。
1935年、東京生まれ。一橋大学を卒業後、同大大学院社会研究科を修了。中学時代をカトリック修道院ですごした経験から西欧中世史の研究に進み、小樽商科大学教授に。69年からは2年間ドイツに留学、西洋の市民社会成立を研究し、74年に発表された『ハーメルンの笛吹き男』では史実を基に童話の世界を解明して大きな反響を呼んだ。さらに日本史の網野善彦らとともに、日本に「社会史」が根付く重要な役割を果たした。79年には一橋大学社会学部教授となり、92~98年まで同大学長を務めた。
『中世を旅する人びと』(74年)はサントリー学芸賞、『中世の窓から』(81年)は大佛次郎賞を受賞した。また、「世間」をキーワードに、独立した個人が構成する社会について、その独自の視点から日本人論を展開、『「世間」とは何か』などの著書を著した。97年に紫綬褒章を受章。