ヨシモト・タカアキ。詩人、評論家。
2012年3月16日、戦後の日本の思想界に大きな影響を与え、1960年安保闘争や全共闘運動では「反逆する若者たち」の理論的支柱ともなった詩人・評論家の吉本隆明さんが、肺炎のため死去。87歳。
1924年11月25日、東京生まれ。山形県米沢高等工業学校から東京工業大学に進み、大学1年の時に敗戦を迎えた。卒業後は企業で技術者として働いたが、組合運動で職場を追われ、57年から特許事務所に勤務。この間に詩人・評論家として活動を始め、50年代に文学者の戦争責任論や転向論で頭角を現した。やがて既成の左翼運動を批判するようになり、新左翼の理論的支柱ともなった。雑誌「試行」の連載をまとめた「言語にとって美とはなにか」(65年)、「共同幻想論」(68年)、「心的現象論序説」(71年)で高い評価を受け、「戦後思想の巨人」と呼ばれるようになった。80年代には大衆消費社会を肯定的にとらえ、アニメ・マンガなどのサブカルチャーなどについても論評。96年、遊泳中におぼれ意識不明になってから体調を崩し、糖尿病による視力の衰えにも悩まされながらも著作を続けた。82年には文学者らによる反核運動を批判する「『反核』異論」を出版し、東日本大震災後も原発を容認する発言をしていたとされるが、次女で作家のよしもとばななは、これについてツイッターで懐疑的な立場をとっていた。