サイトウ・フミ。歌人。
4月26日、日本芸術院会員で現代短歌を代表する女性歌人、斎藤史さんが、乳がんのため、長野市の病院で死去。93歳。
1909年、東京都出身。小倉高等女学校卒。父親は「二・二六事件」に連座して失脚した陸軍少将で歌人の斎藤瀏(りゅう)。大正末、17歳で短歌をはじめ、40年の第一歌集「魚歌」で注目を集める。戦後、疎開した長野に定住。「うたのゆくへ」が55年、日本歌人クラブ推薦歌集に。よく知られる代表作「白きうさぎ雪の山より出でて来て殺されたれば眼を開き居り」(「うたのゆくへ」)。
母親や夫の介護、生活苦など、日常を象徴的に詠む実験的な作風で現代歌壇に影響を与えた。62年から歌誌「原型」を主宰。歌集に「ひたくれなゐ」(迢空賞)、「渉りかゆかむ」(読売文学賞)、「秋天瑠璃」(詩歌文学館賞、斎藤茂吉短歌文学賞)など。93年、女性歌人として初めて芸術院会員に選ばれ、97年には歌会始の召人(めしうど)に。晩年まで歌作に励み、「ながらへてまだものを書くえんぴつの4B二十本削り了んぬ」は95年の作品。