ニワ・フミオ。作家。
4月20日、文壇の長老で「親鸞」「蓮如」などの作品で知られる作家、丹羽文雄さんが、肺炎のため死去。100歳。
1904年、三重県生まれ。浄土真宗の寺に生まれたが、生母が旅役者と駆け落ちするなど、複雑な家庭環境で育った。早稲田大学国文科卒業後、帰郷して僧侶になったが、32年文藝春秋に発表した生母をモデルにした短編小説「鮎」が、高い評価を受けて上京。「マダムもの」といわれた作品群と、風俗小説で流行作家になった。戦後も本邦初の老人問題小説といわれた「厭がらせの年齢」をはじめ、「禁猟区」「顔」などを発表。還暦後も、宗教をテーマに大作「親鸞」「蓮如」を完成させるなど、旺盛な創作活動を続けた。一方、日本文芸家協会理事長を長く務めるなど文壇のまとめ役的存在で、さらに30年にもわたり同人誌「文学者」を自費で発行し、瀬戸内寂聴、河野多恵子、吉村昭ら多くの作家、評論家を育てた。77年には文化勲章を受章。86年ごろからアルツハイマー病の病床にあり、88年の「蘇生の朝」が最後の作品となっていた。