ワカマツ・コウジ。本名、伊藤孝。映画監督。
2012年10月17日、12日に東京都新宿区内でタクシーにはねられ、重傷を負って入院していた映画監督の若松孝二さんが死去。76歳。
1936年4月1日、宮城県生まれ。高校を2年生で中退し上京。新聞配達やアルバイトなどを経てテレビ映画の助監督となった。63年、ピンク映画「甘い罠」で監督デビュー。「壁の中の秘事」「胎児が密猟するとき」「犯された白衣」「処女ゲバゲバ」など反体制の視点から描いた作品で、当時の若者から熱狂的な支持を得た。ピンク映画の巨匠と呼ばれる一方、71年にはパレスチナ解放人民戦線のドキュメンタリー「赤軍―P.F.L.P 世界戦争宣言」を足立正生と共同で撮影。大島渚監督の「愛のコリーダ」のプロデュースでも知られる。82年には「水のないプール 」で一般劇場用映画にも進出。2002年に肺がんの手術を受け、04年の「完全なる飼育 赤い殺意」でカムバック。以後も政治や暴力をテーマにした作品を意欲的に発表。07年の「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち) 」は、ベルリン国際映画祭の最優秀アジア映画賞と国際芸術映画評論連盟賞を受賞。10年の「キャタピラー 」では主演の寺島しのぶが同映画祭で銀熊賞(女優賞)を受賞するなど、国際的にも高い評価を得ていた。13年春公開予定の「千年の愉楽」(原作・中上健次)が遺作となった。