ツル・シゲト。経済学者。
2月5日、第1回「経済白書」の筆者で、安全保障や軍縮、公害などの環境問題も幅広く論じた経済学者の都留重人さんが呼吸不全のため死去。93歳。
1912年、東京生まれ。旧制八高(現・名古屋大学)在学中に学生運動に参加して除籍となる。その後渡米し、ハーバード大学、同大学院で理論経済学を学んだ。1930年代の同大学院には、後の経済学をリードするサミュエルソンらが在籍しており、ともに学ぶなかで親交を深めた。博士号取得後、同大の講師を務めたが、太平洋戦争の開戦を機に帰国し、東京商科大学(現・一橋大学)の東亜経済研究所に勤務。終戦後の47年、片山哲内閣の下で第1回「経済白書」を執筆し、「国家も企業も家計も赤字」と当時の日本経済を表現した。その後、一橋大学で教壇に立ち、72年から75年まで同大学長を務めた。77年には日本人として初めて国際経済学協会(IEA)の会長に就任。一方で社会問題にも積極的に発言し、経済成長至上主義を批判。「日本環境会議」の代表委員を務め、公害問題にも取り組んだ。60年代から80年代にかけて東京都知事選への出馬要請を再三受けたが固辞。「経済学はむずかしくない」「日米安保解消への道」など多数の著書がある。