ゲンユウ・ソウキュウ。僧侶、作家/フジタ・ヨシナガ。作家。
7月17日、第125回芥川賞、直木賞の選考委員会が開かれ、芥川賞には、玄侑宗久(45歳)の「中陰の花」(文学界5月号)が、直木賞には、藤田宜永(51歳)の「愛の領分」(文芸春秋刊)が選ばれた。藤田宜永の妻、小池真理子は、1996年に第114回直木賞を「恋」で受賞しており、夫婦での直木賞受賞は初めて。
芥川賞受賞の玄侑宗久は、前回「水の舳先(へさき)」で候補となり、2回目の候補で受賞。受賞作は、東北地方の小寺院を舞台に、住職夫婦と、かかわりのあった「おがみや」の老婦人の死を軸に、死と生、信仰の意味を問いかける作品。題名の「中陰」は、人の死後、49日で成仏するまでの、この世とあの世の中間の状態をいう仏教用語。
1956年、福島県三春町生まれ。本名、橋本宗久。慶応大学中国文学科卒。コピーライター、英会話教材のセールスマン、ナイトクラブのマネージャーなどを経て、実家の臨済宗福聚寺(ふくじゅじ)の副住職に。僧職の傍ら、執筆活動をはじめる。
藤田宜永の「愛の領分」は、妻と死別して静かに暮らす50代の仕立屋の男と、30代の女性画家との出会いをしっとりと描いた正当派恋愛長編。藤田は、3度目の候補での受賞。妻の小池真理子が受賞した際には、同時にノミネートされ、夫婦で明暗を分けていた。藤田の受賞決定に、小池は「こんなにうれしいことはありません。2回直木賞をもらったみたい」と、夫と抱き合い涙ぐみながら喜びの弁を語った。
1950年、福井市生まれ。早稲田大学中退後、フランスで7年間暮らし、80年に帰国後、文筆活動に。作品に、「鋼鉄の騎士」(日本推理作家協会賞)、「巴里からの遺言」「求愛」「異端の夏」「はなかげ」など。