タネムラ・スエヒロ。ドイツ文学者・評論家。
8月29日、文芸批評から美術批評まで多彩な仕事を展開した、ドイツ文学者で評論家の種村季弘さんが、胃がんのため死去。71歳。
1933年、東京生まれ。東京大学文学部独文科卒業後、出版社勤務を経て、60年代以降、その博学をベースとした魔術、吸血鬼や悪魔、贋作といったヨーロッパの底流に流れる異端の文化や美術に着目した文筆活動を展開。幻想文学や神秘思想、秘教的な芸術・文化の評論や翻訳、また演劇に関する評論などを次々に出し、フランス文学者の澁澤龍彦らと共に70年代を代表する存在となった。95年「ビンゲンのヒルデガルトの世界」で斎藤緑雨賞、芸術選奨文部大臣賞を受賞。99年「種村季弘のネオ・ラビリントス」で27回泉鏡花文学賞受賞。東京都立大学教授、国学院大学教授を歴任し、近年は温泉や飲み屋を歩き回り、「徘徊老人」を自称する紀行文などでは、江戸や明治の文化や風俗についても関心を寄せていた。最近はがんの治療で入退院を繰り返しながらも、2004年4月には評論「畸形の神」を刊行し、最後まで精力的に執筆活動を続けていた。他の著書に「ナンセンス詩人の肖像」「怪物の解剖学」「ザッヘル=マゾッホの世界」「謎のカスパール・ハウザー」「ぺてん師列伝」、訳書に「象徴のラビリンス」(共訳)などがある。