ハタノ・カンジ。教育心理学者。
5月23日、社会心理学、生涯教育論、老いと性の問題などで幅広く活躍した心理学者、波多野完治氏が脳梗塞のため、東京都千代田区の病院で死去。96歳。
1905年、東京・神田神保町の古書籍商「巌松堂(がんしょうどう)」の二男として生まれる。東京帝国大学の心理学科を卒業後、法政大学、お茶の水女子大学の教授を経て、69年から71年まで、お茶の水女子大学学長を務める。スイスの発達心理学者ジャン・ピアジェやフランスのワロンなど、フランス系の心理学を日本に紹介した。また、生涯教育、文章心理学、視聴覚教育論などの分野でも活躍。児童心理学者、故・勤子(いそこ)夫人と「波多野ファミリースクール」を設立し、帰国子女教育や生涯教育を実践指導した。猥褻性(わいせつせい)が争われた「チャタレー裁判」では、文章心理学の立場から、猥褻性を否定する弁護側の証人として出廷。93年には、エッセー集「吾れ老ゆ故に吾れ在り」で、タブー視されていた老人の性の問題を取り上げて、ベストセラーに。「十五少年漂流記」の訳者でもある。