ヤマナカ・チエコ。歌人。
3月9日、古典と前衛短歌をおりまぜた作風で、現代女性歌人の第一人者として活躍した山中智恵子さんが、急性心不全のため死去。80歳。
1925年、愛知県生まれ。45年、京都女子専門学校(現・京都女子大学)国文科を卒業。46年から前川佐美雄に師事し、「オレンヂ」の創刊に参画。さらに「日本歌人」の復刊に携わり、同誌の同人歌人としても活躍した。57年、第1歌集「空間格子」を刊行。その後、前衛短歌運動に加わり、59年に寺山修二や塚本邦雄らと「極」を創刊。63年に第2歌集「紡錘」を発表した。古典と前衛短歌それぞれの特徴を取り入れた作風で、74年の第4歌集「虚空日月」に掲載された代表歌「くちびるに水のことばはあふれつつ吟遊なべて渇食(かつじき)の秋」など、鋭敏な言語感覚と叙情性や韻律から「現代の巫女(みこ)」と呼ばれた。85年、病死した夫を歌った歌集「星肆(ほしくら)」で迢空賞、2005年に「玲瓏(もゆら)之記」で前川佐美雄賞を受賞。主な歌集に「みずかありなむ」、評論集に「三輪山伝承」などがある。