モブ・ノリオ。第131回芥川賞受賞者。
オクダ・ヒデオ。第131回直木賞受賞者。
クマガイ・タツヤ。第131回直木賞受賞者。
7月15日、第131回芥川賞・直木賞の選考会で、芥川賞はモブ・ノリオの「介護入門」に、直木賞は奥田英朗の「空中ブランコ」と、熊谷達也の「邂逅の森」に決まった。
芥川賞受賞のモブ・ノリオは1970年奈良県生まれ。大阪芸術大学文芸学科を卒業後、営業職、倉庫勤務、家庭教師など、さまざまな職業を経験しながらロックバンドなどの音楽活動をしてきた。受賞作で第98回文學界新人賞を受けて作家デビュー。芥川賞の「介護入門」は自宅で母と一緒に祖母を介護した体験を基に、29歳、無職で「金髪の穀潰し(ごくつぶし)」の俺が、祖母の介護に専念する話を軸に人間模様をラップ調の文章で描いた作品。記者会見では「この作品の後に書いたものを(文學界新人賞に)出そうと思ったんやけど、書けなくて本棚の隅にあったこれをコピーとって送った」「次の作品はといわれても書けるかわからない」と述べ、将来性に疑問がの声には「賞を取りたくて書いたんじゃない。ほっとけといっといてください」とコメントするなど異例の会見となった。
直木賞受賞の奥田英朗は1959年岐阜県生まれ。78年岐阜県立岐山高校卒業。コピーライター、プランナー、構成作家などを経て、97年「ウランバーナの森」で作家デビュー。4度目の候補作ともなった受賞作「空中ブランコ」は「じゃあ、注射をしようか」が決まり文句の精神科医伊良部一郎が活躍する「イン・ザ・プール」の続編。約10年前に2週間ほど精神科に通院した経験が投影されているという。
同じく直木賞受賞の熊谷達也は1958年仙台市生まれ。84年東京電機大学理工学部卒業。公立中学校教諭、保険会社嘱託社員、損害保険代理店主を経て、97年「ウエンカムイの爪」で第10回小説すばる新人賞を受賞し小説家となった。受賞作の「邂逅の森」は大正から昭和にかけての東北を舞台に、マタギの青年の波乱に満ちた人生を描いたもので、第17回山本周五郎賞とのダブル受賞となった。