ロナルド・ビッグズ。Ronald Arthur Biggs。
5月7日、「大列車強盗」の逃亡犯、ロナルド・ビッグズが、35年ぶりに逃亡先のブラジルからイギリスに帰国。
「大列車強盗」は映画にもなった犯罪史上に残る大事件。1963年8月8日、15人組の強盗団がロンドン郊外で郵便列車を襲い、古いポンド紙幣263万ポンド(当時の日本円で約10億円、現在ではおよそ90億円)を強奪した事件。
強盗団は、残された指紋から足がつき、全員が逮捕された。ビッグズは懲役30年の刑を受けて服役。しかし、1年3カ月後に脱獄。隠しておいた分け前で整形手術を受け、スペイン、オーストラリア、南米各地を逃亡。74年に、リオデジャネイロで逮捕されたが、当時、愛人が妊娠しており、ブラジル人の子供の父親は犯罪者といえども他国に送還されない、というブラジルの法律に助けられて釈放される。81年には、イギリスの元特殊部隊の隊員に誘拐されたが、違法拉致(らち)の判決でまた放免に。ブラジルでは「大列車強盗」の逃亡者として、ヒーローとなった。しかし、脳卒中で健康を害してから、望郷の念にかられ、「最後の望みは、ロンドンのパブで1杯のビールを飲みたい」と、帰国を希望。ビッグズの願いを叶えたのが、イギリスの大衆紙「サン」。独占取材とひき替えに、特別機を手配。ロンドン郊外の空軍基地に降り立ったビッグズは、その場で逮捕収監された。35年間の逃亡生活で、車椅子に乗った筆談のみの老人となっていたが、今後は医療刑務所で余生を送ることになる模様。
1929年、ロンドン生まれ。15歳で犯罪に手を染め、18歳で空軍に入隊するが、盗みで除隊に。49年、自動車泥棒で2度目の服役時に、後の「大列車強盗」事件の主犯ブルース・レイノルズと獄中で出会う。逃亡後は、世界に名高い「ピカレスク・ヒーロー」に。