キノシタ・ジュンジ。劇作家、小説家。
10月30日、「夕鶴」「子午線の祀り」などで知られる劇作家、木下順二さんが、肺炎のため死去。92歳。
1914年、東京生まれ。旧制高校までを熊本県で過ごしたのち、東京帝国大学英文科に入学しシェークスピアを専攻。戦中に書いた「風浪」で岸田演劇賞を受賞。民話「つるの恩返し」を下敷きに執筆した「夕鶴」は、女優の山本安英(やすえ)がヒロインを演じ、49年の初演以来、上演は1000回以上を数え、歌舞伎や能、オペラ(團伊玖磨作曲)にもなった。狂言や歌舞伎・新劇など多彩な表現を駆使した源平興亡史「子午線の祀り」(78年)を始めとする劇作で、戦後演劇界を牽引したばかりでなく、平和運動などにも関わった。また、国からの賞や勲章はすべて固辞し、芸術院会員に選ばれた際も「一介の物書きでいたい」と辞退した。ほかの代表作に「オットーと呼ばれる日本人」(62年)など。旧制五高時代は馬術部の主将を務め、馬の研究家としても知られていた。