タダ・トミオ。免疫学者。
2010年4月21日、世界的な免疫学者でありエッセイストとしても知られ、晩年は障害者のリハビリを制限する診療報酬改定をめぐり積極的な発言を続けていた東京大学名誉教授の多田富雄さんが、前立腺がんのため死去。76歳。
1934年3月31日、茨城県生まれ。千葉大学医学部教授、東京大学医学部教授、東京理科大学生命科学研究所長を歴任。71年、免疫反応を抑制するサプレッサー(抑制)T細胞(リンパ球)を発見。ノーベル賞級の業績と評価され、野口英世記念医学賞(76年)、エミール・フォン・ベーリング賞(80年)などを受賞。84年には文化功労者にも選ばれ、96年から99年まで国際免疫学会連合会議の会長を務めた。一方で、伝統芸能の一つである能は新作を手がけるほど造詣(ぞうけい)が深く、エッセイでは「免疫の意味論」で大仏次郎賞(93年)、「独酌余滴」で日本エッセイストクラブ賞(2000年)などを受賞。01年、脳梗塞(こうそく)に倒れた後は、障害と闘いながら執筆活動を行い、08年には闘病生活をつづった「寡黙なる巨人」で第7回小林秀雄賞を受賞。障害者のリハビリの保険給付が最大180日で打ち切りになる06年の診療報酬改定をめぐっては、制限撤廃を求める署名を厚生労働省に提出するなど反対運動を展開した。