クゼ・テルヒコ。演出家。作家。
3月2日、「時間ですよ」「寺内貫太郎一家」「ムー一族」など人気テレビドラマの演出を務めた久世光彦さんが虚血性心不全のため死去。70歳。
1935年、東京生まれ。東京大学文学部美術史学科を卒業し、KRテレビ(現・TBS)に入社。脚本家の故・向田邦子とコンビを組み、ドラマ「時間ですよ」「寺内貫太郎一家」などの演出を担当。ざん新な演出手法に加え、銭湯のシーンで裸の女性を登場させるなど話題づくりも巧みで、担当したドラマは高視聴率を記録した。また、テレビ以外でも活躍し、映画「夢一族 ザ・らいばる」の監督、中村勘三郎主演の舞台「浅草パラダイス」の演出などを手がけた。79年、TBSを退職し、テレビ番組制作会社カノックスを設立。92年、「女正月」の演出で芸術選奨文部大臣賞を受賞。作詞を担当した香西かおりの「無言坂」はレコード大賞を受賞した。名文家としても有名で、94年に小説「一九三四年冬-乱歩」で山本周五郎賞を受賞。他の著書に「昭和幻燈館」、「蝶とヒットラー」(Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞)、「蕭々館日録」(泉鏡花文学賞受賞)、「聖なる春」などがある。俳優の森繁久弥を題材にした週刊新潮のコラム「大遺言書」の原稿を2月28日に編集者に手渡すなど、死の直前まで仕事をこなしていた。