イノウエ・ヤチヨ。本名、片山愛子。日本舞踊家。
3月19日、人間国宝で四世・井上八千代の京舞井上流前家元、井上愛子さんが、脳梗塞(こうそく)のため死去。98歳。
1905年、京都市生まれ。3歳の時に、「都をどり」の創始者で祇園の京舞井上流を広めた三世・井上八千代の内弟子となり、14歳で名取を許されて井上愛子を名乗る。三世家元の孫である観世流能シテ方、片山博通と結婚。先代没後の47年、四世・井上八千代を襲名。翌48年、それまで祇園の地を出ることのなかった京舞の舞踊会を東京で開催し、高い評価を得た。55年、人間国宝の制度ができてから初の認定者に選ばれた。また長男の観世流能シテ方、九代目片山九郎右衛門も2001年に人間国宝に選ばれている。1957年には女性舞踊家として初めて日本芸術院会員となり、90年には文化勲章を受章。古曲の伝承、復活のほか新作の振り付けに意欲的に取り組む一方、後継者の育成にも力を注いだ。2000年、孫の三千子に八千代の名と家元を譲り、再び井上愛子に戻っていた。