コウノ・トモヒロ。農学博士。生物学者。
4月22日、東京農業大学の河野友宏教授らの研究グループが受精をしていない雌の卵子だけを使い、新たに雌のマウスを誕生させることに成功したとイギリスの科学誌「ネイチャー」に発表。
1953年、東京都生まれ。82年東京農業大学大学院博士後期課程修了。東京農業大学応用生物科学部教授。雌の遺伝情報だけからの個体発生は「単為発生」と呼ばれ、昆虫や魚などでは時々、観察される。しかし、ほ乳類では遺伝子別刷り込みと呼ばれる現象により、起こりえないと考えられていた。ほ乳類の受精卵は卵子と精子の双方から染色体を1組ずつ受け継ぐ。研究チームは、卵子が成熟する過程で、一部の遺伝子が変化し、雌から受け継いだ場合と雄から受け継いだ場合では異なる働きを示すことに着目。雌に特有の働きを持たせる遺伝子を人為的に欠損させたマウスから、未成熟な卵母細胞を採取。この細胞から受け継いだ遺伝子が、雄から受け継いだ遺伝子の「肩代わり」をした結果、単為発生が成功したと見られている。