ナカムラ・カズオ。僧侶。
2008年12月17日、第二次世界大戦のビルマ戦線の戦没者を弔うため僧侶となり、現地に残る日本兵の姿を描いた小説「ビルマの竪琴」の主人公、水島上等兵のモデルとされる僧侶の中村一雄さんが、老衰のため死去。92歳。
1900年、群馬県生まれ。13歳で仏門に入り、38年福井県の永平寺で修行中に召集された。中国、東南アジアなどを転戦した後、ビルマ(現ミャンマー)で捕虜となり、終戦を迎えた。収容所ではコーラス隊を編成し、合唱で他の捕虜たちの心を慰め、読経で死者を弔った。この話を中村さんと同じ部隊に所属していた教え子から聞いたドイツ文学者の竹山道雄が、47年に小説「ビルマの竪琴」を発表。56年、85年に2度映画化され、ともに大ヒットとなった。中村さんは46年に復員後、47年から93年まで雲昌寺(群馬県昭和村)の住職を務め、67年、自らの体験を基にした児童書「ビルマの耳飾り」で、講談社児童文学新人賞を受賞。引退後には私財を投じ、ミャンマーに死者を供養するための慰霊塔を建立。現地に小学校も寄贈した。