ヤスオカ・ショウタロウ。作家。
2013年1月26日、「第三の新人」を代表する作家、安岡章太郎さんが、老衰のため死去。92歳。
1920年5月30日、高知県生まれ。陸軍獣医だった父とともに少年時代は転居を重ね、41年慶応義塾大学に入学。在学中に陸軍に召集されて中国東北部へ派遣されたが、胸部疾患のため内地送還となった。第二次世界大戦後は脊椎カリエスとの闘病を続けながら小説を書き、51年「三田文学」に発表した「ガラスの靴」で芥川賞候補。53年「陰気な愉しみ」「悪い仲間」で芥川賞を受賞。政治色が濃い先行世代の戦後派作家に対して、日常生活を描きながら人間の在り方を問う作風で、吉行淳之介、遠藤周作らとともに「第三の新人」と呼ばれた。56年には軍隊経験を描いた「遁走(とんそう)」、59年には復員した父親の居場所のない家庭と精神に異常をきたした母の死を描いた「海辺(かいへん)の光景」を発表し、芸術選奨文部大臣賞を受賞。76年から5年間にわたり父方の一族のルーツをたどる「流離譚(りゅうりたん)」を「新潮」に連載し、2000年には明治維新後の母方の一族の生き様を描いた「鏡川」を発表。01年文化功労者。他の作品に「伯父の墓地」「果てもない道中記」「アメリカ感情旅行」「走れトマホーク」「放屁(ほうひ)抄」「僕の昭和史」などがある。