ミズカミ・ツトム。作家。
9月8日、小説「飢餓海峡」などで知られる作家の水上勉さんが、肺炎のため死去。85歳。
1919年、福井県生まれ。貧しい宮大工の家に育ち、口減らしのため幼いころ、京都の禅寺へ預けられた。寺の習慣と修行の辛さに逃げ出したこともあったが、この時の体験が後の作品に影響を与えた。苦学して立命館大学に入るが中退。働きながら文学を志し、職を転々とした。戦後、宇野浩二に師事し、48年処女作「フライパンの歌」を発表。長い空白を置いた59年の「霧と影」で注目され、社会派推理小説で流行作家になった。61年「雁の寺」で直木賞を受賞。その後「飢餓海峡」「五番町夕霧楼」「越前竹人形」などの作品を次々と発表。歴史小説や劇作にも幅を広げ、「宇野浩二伝」「一休」「良寛」「ブンナよ、木からおりてこい」など伝記文学や童話にも優れた作品を残し、谷崎潤一郎賞、川端康成文学賞など多くの文学賞を受賞。98年に文化功労者。郷里の大飯町に「若州一滴文庫」を作るなど、地道な文化活動にもつくし、環境問題や福祉に関する社会的発言も多かった。