ムラカミ・ノブオ。料理人。
8月2日、帝国ホテルの総料理長を務め、日本におけるフランス料理普及の仕掛け人となった村上信夫さんが、心不全のため死去。84歳。
1921年、東京生まれ。尋常小学校5年生の時に、相次いで両親を亡くした。その後、小学校卒業を待たずに、洋菓子店で住み込みの奉公をはじめる。以後いくつかの店を移り、1年間の見習い期間を経て40年、帝国ホテルに入社。料理人としての第一歩は、「鍋屋」と呼ばれる厨房での鍋洗いだった。55年に渡欧。フランスのホテル・リッツをはじめ、ヨーロッパ各地で修業を積んだ。帰国後、帝国ホテルでスウェーデンの食事形式「スモーガスボード」を紹介し、そのスタイルはバイキングとして日本人に広く認知されることになった。60年からNHKのテレビ番組「きょうの料理」に出演。フランス料理の手法を取り入れた家庭料理を紹介し、その普及に尽力。64年の東京オリンピックでは選手村の料理長を務め、69年、帝国ホテルの料理長に就任。その後、94年に総料理長を務め、96年からは一線を退き、料理顧問を担当していた。「帝国ホテル厨房物語」ほか、料理に関する著書も多い。