ヤマシロ・トモエ。作家。
11月7日、小説「荷車の歌」などで知られる作家の山代巴さんが、肺炎のため死去。92歳。
1912年、広島県生まれ。画家を志して東京女子美術専門学校洋画師範科に入学したが、実家の破産や反戦運動に参加するなどから中退。37年元共産党員の山代吉宗と結婚し、京浜工場街に移った。40年、共産党再建を図ったとして治安維持法違反で夫とともに検挙され、夫は45年1月に獄死。自身も敗戦直前に栄養失調で仮釈放されるまで獄中生活を送った。戦後は、農村文化運動、主婦の生活記録運動に積極的に取り組み、戦後農民文学の代表作とされる「蕗のとう」「荷車の歌」などの作品を生み出した。明治の農村を舞台に、貧しくも力強く生きる女性の姿を描いた「荷車の歌」は59年に映画化された。86年には自身の体験をこめ、女囚刑務所を舞台にした大河小説「囚われの女たち」全10巻を刊行した。他の著書に「芽ぐむ頃」「おかねさん」「民話を生む人々」「濁流を越えて」などがある。