カワムラ・ジロウ。ドイツ文学者、文芸評論家。
2008年2月7日、ドイツ近代文学の評論・翻訳のかたわら、日本文学の文芸評論も手がけた川村二郎さんが、心筋梗塞のため死去。80歳。
1928年、愛知県生まれ。東京大学文学部独文学科を卒業した後、名古屋大助教授を経て、東京都立大(現、首都大学東京)の教授に就任。ホフマンに代表されるドイツ幻想文学を研究しながら、トーマス・マンやブロッホなどを翻訳し、ベンヤミンなどを日本に紹介した。66年発表の「保田與重郎論」で、文芸評論家としても知られるようになり、69年の初の評論集「限界の文学」では、第1回亀井勝一郎賞を受賞した。幻想的な作風で知られる、泉鏡花や幸田露伴らを論じた73年の「銀河と地獄」で芸術選奨文部大臣新人賞、83年の「内田百ケン論」では読売文学賞を受賞(ケン=「門」の中に「月」)。91年に退官した後も、92年の「アレゴリーの織物」で伊藤整文学賞を受賞するなど、精力的に文筆活動を行ったほか、長年にわたり文学賞の選考委員や新聞の文芸時評委員を務めた。2007年には旭日中綬章を受章。他の著書に「幻視と変奏」「語り物の宇宙」など。