カトウ・シュウイチ。評論家。
2008年12月5日、第二次世界大戦後の日本を代表する進歩的知識人の1人で、文学をはじめ政治や社会など幅広い分野で評論活動を展開した評論家の加藤周一さんが、多臓器不全のため死去。89歳。
1919年、東京生まれ。旧制第一高等学校から東京帝国大学医学部に進み、血液学を専攻。戦後の47年、福永武彦、中村真一郎との共著「1946・文学的考察」で文壇に登場。長編「ある晴れた日に」などで小説家としても認められる。51年から55年まで、留学生としてフランスに渡航。医学の研究のかたわら西欧各地の文化を研究。56年、評論集「雑種文化」で日本文化の雑種性とその可能性を指摘し、注目を集めた。58年からは医業を離れて評論と創作活動に専念。60年代にはカナダ、ドイツ、アメリカ、日本の大学で教壇に立ちながら執筆を続け、68年発表の自伝「羊の歌」は多くの読者を獲得した。80年には万葉集から現代までの日本文学を世界史的視野から通観した「日本文学史序説」で大佛次郎賞を受賞するなど、幅広いジャンルで旺盛な執筆・評論活動を展開した。核問題や安保問題などにも積極的に発言し続け、2004年には作家の大江健三郎らと「九条の会」を結成し、憲法9条擁護を訴えた。著書に「現代ヨーロッパの精神」「言葉と戦車」「現在のなかの歴史」「日本文化における時間と空間」などがある。