タカスギ・イチロウ。本名、小川五郎。作家・翻訳家。
2008年1月9日、シベリア抑留体験記「極光のかげに」のベストセラーで知られる、和光大学名誉教授の高杉一郎さんが、急性心不全のため死去。99歳。
1908年、静岡県生まれ。東京文理科大学(現・筑波大学)在学中に新興教育運動(「社会科学研究会事件」)にかかわり退学、改造社に入社。雑誌「文藝」編集長となるものの、当局の命令により、社は解散。東京文理科大に再入学し、仕事を続けながら同大を卒業し、44年夏に軍隊に召集される。太平洋戦争敗戦後は、シベリアで4年間の抑留生活を余儀なくされる。50年に帰国後、その俘虜体験をつづった「極光のかげに」を発表。芥川賞候補に挙げられて、作品はベストセラーとなった。その後、静岡大学、和光大学の教授を歴任。学生時代からエスペラント語を学び、大正期に滞日したロシアの盲目のエスペラント詩人エロシェンコの紹介に尽力する。さらに独力で「エロシェンコ全集」全3巻の編訳を成し遂げ、内外で高い評価を得た。児童文学の名訳者としても知られ、ピアス「トムは真夜中の庭で」などの翻訳がある。