ヤマグチ・マサオ。文化人類学者。
2013年3月10日、「中心と周縁」「トリックスター」などの概念で、1970年代以降の日本の思想界に大きな影響を与えた文化功労者の山口昌男さんが、肺炎のため死去。81歳。
1931年8月20日、北海道生まれ。東京大学国史学科卒業後、麻生中学で教員を務めながら都立大学(現・首都大学東京)大学院で人類学を学んだ。63年にはナイジェリアのイバダン大学で講師を務め、帰国後は東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所を拠点に、アフリカやインドネシアなどの現地調査から研究を重ねた。73年から94年まで同大学で教授を務めたほか、パリ大学の客員教授となるなど海外でも活躍。退官後は静岡県立大学教授、札幌大学長を歴任。フィールドワークを基に、世界秩序を解き明かした「中心と周縁理論」や、道化の役割を民俗学的な視点でとらえた「トリックスター論」などで、70~80年代の思想界を牽(けん)引した。95年には「『敗者』の精神史」で歴史に埋もれた人物の業績を掘り起こし、大佛次郎賞を受賞。2011年に文化功労者。主な著作に「人類学的思考」「文化と両義性」「道化の民俗学」「天皇制の文化人類学」など。