マエ・トシオ。歌人、詩人。
2008年4月5日、奈良、吉野で独自の世界を築き、作歌活動を続けていた歌人の前登志夫さんが、肝硬変のため死去。82歳。
1926年、奈良県生まれ。同志社大学商学部中退。吉野山で林業を営む家の二男だったが、兄の戦死により、25代目の当主となる。詩人として56年に詩集「宇宙駅」を刊行。その一方、55年より前川佐美雄に師事し、作歌活動を開始。58年の帰郷後は家業に従事しながら執筆活動も続け、64年第一歌集「子午線の繭」を刊行。67年からは歌と民俗を研究する「山繭の会」を主宰し、80年には歌誌「ヤママユ」を創刊。郷里、吉野の風土を背景に独自の世界を築いた。歌集「縄文紀」で迢空賞、「青童子」で読売文学賞を受賞。2005年日本芸術院会員。他の歌集に「霊異記」「樹下集」「鳥総立」、評論・随想に「吉野紀行」「山河慟哭」「存在の秋」などがある。