トツカ・ヨウジ。物理学者。
2008年7月10日、素粒子のニュートリノに質量がある証拠をとらえ、恩師の小柴昌俊教授との師弟ノーベル賞受賞が期待されていた東京大学特別栄誉教授の戸塚洋二さんが、多臓器不全のため死去。66歳。
1942年、静岡県生まれ。高校時代にアインシュタインとインフェルトの共著「物理学はいかに創られたか」に刺激を受け、東京大学理学部物理学科に進んだ。2002年にノーベル物理学賞を受賞した小柴教授の弟子として、同大宇宙線研究所神岡地下観測所で「カミオカンデ」の実験にたずさわり、87年には同教授らとともに、超新星から飛来するニュートリノを世界で初めて観測。96年から観測が始まったスーパーカミオカンデでは、ニュートリノに質量があることを示す「ニュートリノ振動」と呼ばれる現象を発見。アメリカ天文学会ロッシ賞、ベンジャミン・フランクリン・メダル、欧州物理学会特別賞などさまざまな賞を受賞し、ノーベル賞候補としても注目されていた。また小柴教授とともに、東京大学が初めて制定した「特別栄誉教授」の終身称号を授与されている。しかし、2000年に腸のがんが見つかり、その後、再発や肺への転移が続いた。闘病生活について、評論家の立花隆との対談が雑誌「文藝春秋」の08年8月号に掲載されたばかりだった。