ヤン・イー。本名、劉チョウ。作家。
イノウエ・アレノ。作家。
2008年7月15日、第139回芥川賞・直木賞の選考委員会が開かれ、芥川賞は楊逸の「時が滲(にじ)む朝」(「文学界」08年6月号)に決まった。また直木賞は井上荒野の「切羽(きりは)へ」(新潮社)に決まった。
楊逸は1964年、中国黒竜江省生まれ。87年、大学4年のときに来日。アルバイトで学費を工面しながら日本語学校で学んだ後、お茶の水女子大学で地理を専攻。卒業後、在日中国人向けの新聞社に勤務しながら中国語で詩やエッセーなどを発表。日本人と結婚したが離婚し、現在は中国語講師を勤めながら2人の子どもを育てている。2007年、日本の農村に嫁いだ中国人女性を主人公にし、日本語で書いた最初の小説「ワンちゃん」で文学界新人賞を受賞、芥川賞候補にもなった。今回の受賞作「時が滲む朝」は、1989年6月に起こった天安門事件をテーマにした青春小説で、日本語を母語としない作家の受賞は初めてのこととなる。
井上荒野は1961年、東京都生まれ。作家・井上光晴の長女。高校時代から父がノートに書いた作品を原稿用紙に清書するアルバイトをし、大学卒業後、フリーライターを経て、89年、「わたしのヌレエフ」で第1回フェミナ賞を受賞、作家生活に入った。その後スランプの時期が続いたが、2004年に「潤一」で第11回島清恋愛文学賞を受賞。第26回、第27回と2回続けて吉川英治文学新人賞の候補となり、「ベーコン」で前回の直木賞候補ともなっていた。他の作品に「ひどい感じ 父・井上光晴」などがある。