ハイビジョン映像の浸透にともない、その膨大なデータを記録するには、従来のDVD(Digital Versatile Disc)の片面1層4.7GB(ギガバイト)の容量では不足となった。そこで、「次世代DVD」の規格が策定され、ソニーや松下電器産業らが中心の「ブルーレイディスク」と、東芝らが中心の「HD DVD」が台頭。波長が短い青紫色レーザーの実現によって、データを読み取る際の焦点を小さく絞れるようになり、より多くの記録容量を実現できることから、両者ともこれを採用。一般に、ディスクメディアは、データとなる「記録層」を透明素材の基板に刻み、裏側からデータを読み取るため、基板は同時に「保護層」の役割も果たす。レーザーはこの保護層で屈折・散乱するため、記録層が浅いほど精度よくデータを読み取れ、記録容量も増やせる。しかし、保護層が薄ければ、キズに弱く、DVDやCDのように盤面を研磨で修繕することも困難となり、対応策のハードコートですら万全とは言い難い。ブルーレイディスクは保護層を0.1mmとし、片面1層で25GBもの記録容量を実現。対して、HD DVDはDVDで培った技術を流用しての低コスト化や記録層の耐久性を視野に入れ、保護層を0.6mmとしたため、記録容量は片面1層で15GBにとどまった。両者は2005年の4月に、規格統合の協議に入るも、同年8月には決裂。映画会社などを巻き込んで熾烈(しれつ)な競合が展開されたが、形勢はブルーレイディスクに傾き、08年2月19日、東芝はHD DVDからの撤退を表明した。