電力会社の発電部門と送電部門を分離すること。2011年5月18日、東京電力福島第一原子力発電所事故の賠償問題等にからみ、菅直人首相が記者会見で議論の開始を明言したことから注目を集めた。電力事業を発電会社と送電会社に分離した場合、発電会社は送電会社に送電線網使用料を支払うだけで、送電網への膨大な投資が不要になる。このため、従来の電力会社の発電会社と新規参入事業者の立場は同じとなることから、新規参入の増加、競争による電気料金引き下げなどが期待できる。海外では、イギリスが1990年に発送電分離を実施したほか、ドイツやフランス、アメリカの一部の州でも分離が進んでいる。日本は、地域ごとに独占が認められた電力10社が発電から送電、小売りを一貫して担う体制が基本で、90年代に始まった電力自由化でも、特定規模電気事業者の発電事業への新規参入は認められたが、送電は電力10社の独占となっていた。2002年には経済産業省で本格的な発送電分離が議論されたが、電力10社の「一貫体制だから責任ある供給が可能で分離は供給の不安定化を招く」との主張に押し切られ、導入は見送られた。しかし、09年で新規参入事業者のシェアが3%弱程度と伸び悩んでいることや、送電網の分離は、遠隔地に巨大発電所を造り都市の大量消費地に送るこれまでのシステムに対して、風力、太陽光など小規模自然エネルギー発電を消費地近くで生産する分散型エネルギーシステムや、地域間の電力過不足を解消するスマートグリッドなどの導入に適しているとの指摘もあり、一部で発送電分離の再検討を望む声も上がっていた。