ドイツで実用化された高性能の省エネルギー住宅。1991年にパッシブハウス研究所によって規格が作られた。分厚い壁の断熱材や三重ガラスの窓、24時間駆動の換気装置などによってきわめて高い断熱性と気密性をもち、一般的な暖房設備なしでも快適な室温を保つことができる。名称は積極的に暖房のエネルギーを使わない、すなわち受動的(パッシブ)にエネルギーを利用することに由来する。日本では一般に無暖房住宅とよばれる。パッシブハウスには厳密な性能条件が定められており、おもな条件として、(1)断熱性能は、年間の暖房に必要なエネルギー消費量が1平方メートルあたり電気換算で15kWh(キロワットアワー)以下(灯油で約1.5リットル弱程度)、(2)エネルギー消費量は、家電を含む冷暖房、除湿、換気、給湯、照明などの年間一次エネルギー消費量が1平方メートルあたり120kWh未満、(3)換気装置は、室内への空気を地中の熱交換器で暖め、室外への空気は80%以上の熱エネルギーを回収する24時間作動の熱交換換気システム、などがあげられる。ドイツでは2002年に省エネルギー政令が発効して以降、新築住宅はすべて省エネルギータイプの住宅が義務づけられ、パッシブハウスが広まりつつある。また、個人用住宅だけでなく、大規模なマンションやオフィスにも適用が拡大しているほか、北欧やEU(欧州連合)での省エネ住宅の標準仕様となりつつある。ちなみに、ドイツの省エネ住宅は、エネルギー消費基準によって低エネルギーハウス、パッシブハウス、ゼロ暖房エネルギーハウス(寒い日でも暖房が不要)、ゼロエネルギーハウス(太陽光発電などの自家発電で外からの電力が不要)、プラスエネルギーハウス(消費する以上の余剰電力を生み出す)の5段階に分類される。