宮崎牛の種牛で、名前は安平(やすひら)、1989年4月12日生まれの21歳。人間なら100歳ほどの年齢で、すでに現役を退き余生を過ごしていたが、宮崎県で発生した家畜の感染症、口蹄疫により殺処分が決定。種牛とは、肉質の良い子牛を得るために雌牛に種付けの精液を提供する雄牛。「昭和の『安福』、平成の『安平』」と称され、最高品質の子牛約22万頭を生み出した全国屈指の種牛として知られる。ちなみに安平は安福の子どもでもある。種牛は普通、8歳ごろが精液採取のピークだが、安平は16歳ごろまで現役だった。その精液はピーク時には通常の10倍以上の価格で取引され、かつては冷凍精液が盗まれる事件も起きたほどであった。全国の畜産業者の間では伝説的な種牛で、多くの種牛は引退とともに処分されるが、宮崎県の畜産業に多大な貢献をした安平は、最期まで飼い続けようと飼育が続けられていた。功績をたたえて宮崎県家畜改良事業団の敷地には等身大の銅像が建っている。宮崎牛の肉用子牛は、松阪牛や佐賀牛など、全国各地のブランド和牛の「素牛(もとうし)」となっているが、宮崎牛のブランド力の向上や子牛価格の上昇には、圧倒的な人気があった安平の存在が大きかった。