2010年7月21日にバラク・オバマ大統領が署名し成立した、金融危機の再発防止をめざしたアメリカの金融規制法。1980年代から進められてきた金融自由化政策を転換する法律で、金融機関の事業、金融商品などの包括的規制が盛り込まれ、33年のグラス・スティーガル法以来の抜本的な改革となる。正式名は「ドッド・フランク・ウォール街改革および投資者保護法」。法律の第1の柱は、金融危機に対応できる新たな金融監督体制の構築が図られた点で、金融システムを総合的に点検するために、連邦準備制度理事会(FRB)、財務省、証券取引委員会(SEC)など、連邦の主要金融規制機関による金融安定監督協議会が創設され、銀行、証券、保険などの主要金融機関の監督権限はFRBに一元化された。破たん処理は、大手であっても公的資金による救済をせず、金融業界の負担で円滑に破たん処理を行う。また、一定以上のヘッジファンドはSECへの登録が義務づけられた。第2の柱は、金融機関の高リスク取引規制で、ボルカー元FRB議長が立案したボルカー・ルールが導入され、銀行のヘッジファンドへの投資は中核的自己資本の3%に制限され、リスクヘッジ目的を除くデリバティブ(金融派生商品)取引は銀行本体から切り離される。デリバティブ取引も取引所を通じた取引に大半を移行し、透明性が高められる。第3の柱は、消費者保護の徹底で、2008年秋以降の金融危機では、サブプライムローンの返済不能で一般消費者の自宅差し押さえが続出したことから、FRB傘下に消費者金融保護局が新設され、住宅ローン、クレジットカードなどの取引がチェックされる。また、預金保険の保護額上限は25万ドルとされた。なお、今回の法律は金融業界との調整が難航したため、具体的な指針の多くが成立時には先送りされており、その内容の具体化が今後の焦点とされる。