アメリカで1933年に成立した1933年銀行法(The Banking Act of 1933)の通称名。法案提出者のグラス議員とスティーガル議員の名前に由来する。法律は、29年の世界恐慌に端を発した不況の混乱を背景に、銀行が高リスク投資に傾斜することを防ぎ、預金者の保護や銀行の健全経営を確保することを目的としている。条文には、銀行の証券引き受け業務と株式売買の禁止、銀行と証券会社の資本系列関係の禁止、証券会社の預金受け入れ業務の禁止、銀行と証券の役員兼任の禁止、の4条文が含まれ、銀行業と証券業の業務分離規定が定められた。グラス・スティーガル法という場合、1933年銀行法全体を意味する場合と、銀行と証券の分離規定のみを意味する場合がある。80年代以降、多様化する金融業務などの実情に合わせて、銀行と証券の分離は行政当局の規定によって徐々に緩和されたが、99年11月に成立した金融制度改革法によって、グラス・スティーガル法の銀行業と証券業の分離条項が廃止された。これにより、銀行と証券の垣根が撤廃され、金融持ち株会社、銀行子会社による業務の多角化が認められた。この法律は、法案審議を主導したグラム議員、リーチ議員、ブライリー議員の名前を取ってグラム・リーチ・ブライリー法(GLB法 Gramm-Leach-Bliley Act)と通称される。なお、2008年秋のリーマン・ショックでは、商業銀行の過度な高リスク投資の実態が明らかになったことから、オバマ大統領は10年1月21日、再発防止策としてリスク投資の抑制や自己売買業務の制限など、銀行業務と証券業務の垣根を高める規制強化策を発表し、審議中の金融規制改革法案に盛り込む考えを示した。