タクシーの営業台数の増加を抑制するため、新規事業者の参入や既存事業者の増車に関する規制の強化を柱とした法律。正式名称は「特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法」。2009年6月19日に成立。国土交通省が管轄するタクシー業界は、1993年に事業者ごとの運賃改定が可能になったことを皮切りに、97年には新規参入時の最低保有台数が引き下げられるなど、規制緩和が進められてきた。2002年には、国交省が地域ごとの営業台数を調整する仕組みを廃止。事実上、新規参入と増車が自由化され、運賃の改定基準も緩和された。これによって、低運賃タクシーの登場などサービス向上が進んだが、他方で、競争の激化による運転手の収入減や客の奪い合いによる交通違反や事故の増加など、マイナス面も指摘されるようになった。今回の法律では、過度に営業台数が多い地域を国交省が「特定地域」に指定して、地域内の事業者と自治体などが共同で協議会を設置する制度を新設。地域内では新規参入と増車が抑制されるほか、協議会が策定する適切な営業台数や地域内でのタクシーのあり方を定めた「地域計画」が国交相に認定されれば、複数の事業者が協調して減車する行為が独占禁止法の対象外となる。また、タクシー運賃には自動的に認可を得られる金額の上限と下限が地域ごとに定められているが、この幅を狭めて、過度な低料金が設定できないようにもなった。新法は09年10月に施行の予定だが、法案策定の過程で、首相の諮問機関である規制改革会議が「事業者の経営努力が優先されるべき」との内容の意見書を公表するなど、新制度の導入がサービス低下につながると懸念する声も根強い。